「一生懸命やればいい」という風潮はいつまでつづくのだろうか。

ラグビー

「擁護」を盾に批判論者を攻撃する人たち。

Twitterでワールドカップでのマシレワ選手のプレイについて賛否が起こっていて、
それはトレンド入りするほどだった。
先日のイングランド戦で負傷交代、そのまま離脱となったことで
彼に対する批判は緩和されたように思われる。

選手に対する心無い誹謗や中傷は論外だが、
気になったのは、賛否の賛派による否派への苦言だ。
「あのステップお前にできんのかよ」
「じゃあお前やってみろよ」
「ノックオンしたのはマシレワだけじゃないのに」
「一生懸命やっている人にひどいことを言うな」

などといった内容だ。

文句(批判)を言うならじゃあやってみろよ、
お前にできるのかよ?
は、実力が近しいものになどに使われるべきで
日本代表の選手と比べること自体がナンセンスだ。できるわけがない。
あなたが一社員の立場で、社長に物申したとする。
社長が「じゃあお前やってみろよ」と言われたらどうするのだろうか。
まあ、社長はそんなことは言わないだろうが。

じゃあお前できんのかよ?という暴力。

立場が違うのだから当然だ。
やってみろよ、
できるのかよ、

は、選手を擁護しているようで、対極にある意見を持つ人たちを
きっちり攻撃している。無意識だと思うが。
ラグビーにノックオンはつきもので、確かにマシレワだけではない。
ゴール目前にしたヴァル然り、いくつものハンドリングエラーがあった。
が、マシレワのノックオンは絶対にやってはいけない場所で、
やってはいけない時間帯でいとも容易くやってしまったことが問題なのだ。
皮肉を言うようだが「お前にできんのかよ」と問われたら
一応、元高校ラガーとして「できない」と答える。
あの場面でノックオンはしない、という意味だ。
なぜなら、この試合がどういう種の試合か理解しているからだ。
ほどなく足を痛め倒れるマシレワに対して、
リーチが激昂しているような国際映像が流れた。
何を言っていたのかはわからない。
「早く立て!」なのか、
「まだできるだろ!」なのか、
「闘志なきものは去れ!」なもかもしれない。
ともあれ、あんなリーチを見るのは初めてだ。
試合終了後、ゴールポストにもたれ掛かるリーチは、
まさにワークアウト、すべてを出し切った男の生き様で、
激昂が伏線だったとみている。

やるか死ぬかの想いでワールドカップを戦った人たち。

W杯2戦目、
イングランドとの一戦はJAPANの試金石となるもので
開始早々のインゴールノックオンにはじまり、故障・離脱は
闘将リーチにとって、勝つ気がないと映ったのかもしれない。
真相はわからない。
奇しくも、数時間前。
マシレワの祖国フィジーが69年ぶりにオーストラリアを破った。
キャプテン、ナヤザレブは「やるか死ぬかの想いで戦った」と述べている。
マシレワにその気概や気迫がリーチには見えなかったのかもしれない。
怪我の影響かもしれないが言い訳をしていい場面でも舞台でもない。

そもそも今のJAPANにとってワールドカップとは、
参加することが目的でも、目標でもない。
ましてや善戦することなどでは決してない。

2011年までなら善戦でよかったかもしれない。
何しろ目標はワールドカップ2勝目だったのだから。
ラグビー日本代表は永らく「よくやったな」
上から目線の対戦相手のファンから言われた、と矢野アナも言っていた。
だが、今は違う。
日本はティア1に名を連ね、同じティア1の国々と
堂々と渡り合える実力を身につけた。安定的に勝ててないところが
まだティア1の末席たる所以だ。
そういう意味でも今大会の決勝トーナメント進出は言うまでもなく、
イングランドには何としてでも勝ちたかった。
そういう位置付けの試合だった。全員がその気でなければならない試合で、
私の目からもマシレワがそれを理解しているようには映らなかったのだ。
個人の感想で恐縮だが。

目指すべき頂が違う人と同じ山を登ってはいけない。

スラムダンクの赤木キャプテンは全国制覇を目標にしていたが、
他の選手は楽しくバスケをしたいだけだった、というのに似ている。
前者も後者、個人の自由だ。
ただ、日本代表は違う。ましてやワールドカップだ。
そしてプール戦において最も重要な試合だ。

ワールドカップは「一生懸命がんばる」ことが目的ではない。

日本ハムファイターズの伊藤選手に浴びせたような
誹謗・中傷は断じて許されるべきものではないが、
国の代表である以上、批判に晒されるのは当然だ。

むしろ、
「一生懸命がんばったんだから…」
という人は、残酷だ。
日本代表の可能性を全く信じていない。
日本代表の目標は、あくまでも「ワールドカップ優勝」だ。
2019年大会は「ベスト8」だったが、今回は「優勝」なのだ。
「一生懸命がんばったんだから…」論者は、
勝とうが負けようがいい。全力を出したことを褒めようじゃないか。
だけど勝ったらうれしいな、というスタンスだ。
そういう自覚があるだろうか。
あたりまえだが、全力を出していない選手は一人もいない。
マシレワを空港で出迎え労うのもいいが、それは自分のためだという
自覚があるだろうか。
戦いはまだ続くのである。始まったばかりなのである。
誤解しないでいただきたいが、それがダメだと言っているわけではない。
優勝を目指すチームに優勝よりも善戦や全力を求めるていることは悪だ
ということ自覚すべきだと言っている。
そして、そんなことはいい加減終わりにしたらどうかと言っているのである。
負けても頑張ったからいいでしょう、という概念は選手には酷だ。
敗因は突き止められなければならない。

ファンではない、自分も日本代表の一員という視点。

私はファンではない。場外の日本代表の一員だと思っている。
だからもちろん勝ちにも負けにも関与している。
ワールドカップを目の前にした代表選手のような血反吐を吐くような練習は当然していないし、
偉そうなことはまったく言う気もないが日本代表の一員という気概でテレビの前で一緒に戦っている。だから、誰も責めない。
ただ、勝つために最善を尽くしたい。ワールドカップなのだ。
そのひとつが選手への建設的な批判なのかもしれない。

最後に、参考に。
https://www.rugbypass.com/news/japan-player-ratings-vs-england-rugby-world-cup-2023/

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